異方性結晶薄膜を有する電気光学結晶KTNの相転移近傍における結晶相の温度依存性の定式化と電界・波動伝搬連成解析

渡邊 翼1, 酒井 寛人1, 和仁 陽太郎1, 山田 智明2
1浜松ホトニクス株式会社, 〒434-8601 静岡県浜松市浜名区平口5000番地
2名古屋大学大学院工学研究科エネルギー理工学専攻, 〒464-8603 名古屋市千種区不老町
Publié en 2026

 空間光変調器[1]は、光の位相を空間的かつデジタル的に制御できるデバイスであり、光計測[2,3]、光通信[4,5]、波面制御[6,7,8]など幅広い分野への応用が期待されている。近年は光集積化回路技術[9]の進展に伴い高速な応答特性[10]が求められており、従来の液晶材料に代わる有機ポリマーや結晶材料[11]を用いた変調方式が検討されている。これまでにKTN結晶[12]を用いた空間光変調器を対象に、COMSOL Multiphysicsによる結晶内部の電界・波動伝搬解析[13]を実施し、結晶の表面状態が位相変調特性に及ぼす影響とその抑制方法[14]について検討してきた。また、回折格子型光変調デバイスを作製し、実験的に時間応答評価を行った[15]。  本研究では、KTN結晶表面にチタン酸バリウムとチタン酸ストロンチウムの混晶であるBST[16-18]を異方性結晶薄膜として導入した構造を検討した。相転移温度近傍で共存する異なる結晶相の存在割合を配分率として定義し、その温度依存性を考慮した屈折率変化式を定式化した。これに基づき位相変調特性を評価するとともに、異方性結晶薄膜の面内および面外方向の比誘電率をパラメータとして設定し、光変調量への影響を比較した。  解析には、COMSOL MultiphysicsのAC/DC モジュールおよび波動光学モジュールを使用した。電界方向、光の主軸方向、相転移温度近傍での結晶相の混在状態を考慮し、屈折率楕円体に基づいて屈折率変化式を導出した。配分率をαとして、Kerr効果およびPockels効果の寄与率に設定し、計算式に反映した。静電場解析により得られた電位分布から屈折率変化を算出し、ヘルムホルツ方程式へ反映することで波動伝搬解析を行い、変調波形および位相変調量を評価した。また、高誘電率材料の界面で生じる局所的な電界集中の影響を低減するために、4辺形メッシュを適用した。  図1に面内および面外で比誘電率が与える光変調量の比較結果を示す。面内および面外の比誘電率が1000の場合に最大位相変調量が得られた。この結果から、異方性結晶薄膜による電界分布の変化に伴い、Kerr効果の寄与が増加したことが、位相変調量向上の要因と考えられる。また、変調波形についても従来条件より改善される条件を確認した。  本発表では、結晶薄膜の誘電率異方性が電界分布および位相変調特性に及ぼす影響について報告する。さらに、KTN結晶に対して異方性結晶薄膜を導入することで、特定の制御条件における光変調特性に対して効果的であることを示す。